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2月3日に起こった遭難事故に捜索隊の一員として参加しました。
捜索に当たり遭難者の足跡を遭難事故現場までたどりました。そこから今回の遭難がなぜ起こったのか?防ぐことが出来なかったのかを報告します。その事でこの事故から学び今後の教訓になればと思い報告します。
前夜の10時過ぎに愛山会事務局長の脇本氏より、この時間になっても荒島岳から帰らない登山者が居るので明日捜索に出と欲しいという内容の連絡がありました。
翌朝、7時に勝原登山口に警察の捜索隊と合流することになりました。愛山会からは2名が参加することにしました。
翌朝、予定通り集合、捜索の手順、方法を打ち合わせる。現在、山に掛かっている雲、霧が晴れ次第ヘリが出動することになっていると警察より報告がある。スキー場ゲレンデ内での遭難は無いだろうと判断、ゲレンデ最上部まで登り、ゲレンデが終わる登山口からの尾根を横に広がって足跡、滑った後が無いか捜索しながら登ることにして7時過ぎに駐車場を出発する。
雪の状態
はワカン、アイゼンが無くても歩けた。やわらかくも硬くも無く歩きやすい。雪上の歩きは個人差によって感じ方が違うのでワカン、アイゼン、ピッケルなどの装備は持つべきである事はいうまでも無い。
白山ベンチを過ぎ、深谷の頭を登る斜面で左方向へ行く足跡を発見、足跡はワカンを着けた一人のもので遭難者のモノに間違いない。昨日、深谷の頭からの登山者は一人しか居なかったようだ。
登っている途中、ヘリが来たようだ。ヘリは頂上、頂上への稜線を重点に捜索をしている。稜線で足跡を発見、途中で引き返して足跡が西の尾根へまっすぐついている
とヘリから稜線、頂上付近の情報が入る。多分、中荒島岳の西へ伸びた尾根に迷い込んだのだろうと推察する。
足跡はほぼ尾根通しの夏道を歩いている。シャクナゲ平直下の急斜面を登っているときに県警ヘリより遭難者発見の一方無線に入る。とりあえずシャクナゲ平まで登って指示を待つことにする。
足跡がシャクナゲ平直下から左の鞍部に向かってついている。遭難者は雪の荒島岳に何度か登ったことがあるようだ。トレースも無いこのトラバースのコースを知っていることから判断できる。
私は足跡をたどって先へ行くことにする。脇本氏、警察の2名は下から遭難者の居るはずの現場へ向かう。
もちが壁の雪は固い雪状態、途中でアイゼンをつける。遭難者以前のトレースは一昨日以前の降雪があり、わずかにトレースがわかる程度だ。遭難者の足跡は前荒島岳、中荒島岳まではっきり残っている。
中荒島岳から先、頂上に向かっても足跡は続いている。もうひとつ逆方向に下る足跡が中荒島岳から西に向かった急な尾根を先へと下っていた。
その足跡をたどって下って行く。下って行く尾根は、例年ならダケカンバなどの潅木は雪の下のはずだが今年は背丈の半分以上が雪の上に枝を出している。積雪は1〜1.5mぐらいだろう。とにかく雪が少ない、この辺のダケカンバなど避けるようにジグザグに下っている。70〜80mは下っただろうかその足跡がUターンして登り返している。特別急斜面やガケになったわけでも無い。コース間違いに気がついたのだろうか?
しばらく登り返して今度は右へトラバース気味に方向を変えている。少しずつ右へトラバースしながらのぼり返している。もう少しで谷部というところで滑った足跡があり、そこから先に足跡は無かった。
救出ヘリが到着して遭難者の捜索が始まった。始めはぜんぜん違う場所を探しているようでしたが、ヘリに向けてここから下という合図を送り、この下を探してもらう。この間、脇本氏と携帯電話で連絡を取り合う。
しばらくするとへりは見えなくなり、音も聞こえない。この間に遭難者を発見、吊り上げていたようです。後でわかったことだが横谷まで落ちていた。
私は中荒島岳まで登り返して頂上への足跡をさらにたどる。足跡は頂上手前約150mでひきかえしていた。ここで引き返しているということは事故当時ガスが架かっていたのだろう。荒島岳を知っている人ならガスだけなら
ここまで来て引き返すことは無いだろう。
事故当日、頂上付近の天気模様はガスが架かっていたと思うが雪や雨は降っていなかった。俗に言うホワイトアウトの状態ではなかったように思う。ここまで足跡が綺麗に残っていることから当時の天気模様が推察することができる。
今回の事故で私が疑問感じたのは引き返し戻るとき、なぜ、自分の足跡を忠実にたどらなかったか?翌日の捜索日にもはっきりと足跡が残っている。当日わからなかったことはないと思う。それも2箇所で見逃している。
1.
最初は中岳のピークで90度曲がって前荒島岳への急斜面を下らなければ行けないところを真っ直ぐ尾根を下ってしまった。ここで自分の足跡を見逃している。(降下点には赤い表示布が木につけてありました。)
2.
二番目はコースを間違えて中岳西尾根を下って、登り返すときも足跡を引き返さなかった。このとき、足跡をたどって真っ直ぐ登れば滑り落ちなくてすんだと思う。
以上の2箇所で戻る場合来た道を引き返すという初歩的なミスを守らなかったことが悔やまれる。
もう1つ、装備にも問題が残る。
遭難者はワカンとWストックで登山を行なっていた様だ。例年、今、2月上旬の時期の荒島岳は新雪が毎日のように降りやわらかい新雪が積もっているので、装備はワカン必携なので、ワカンで登ったのは間違いでは無いだろう。しかし、今年の荒島岳はちょっと違う、新雪が少なく雪が凍りクラスト状態だった。この状態をワカンで急斜面を下り、登ることは大変難しい。まして遭難者は急斜面をトラバース中に滑ったようだ。ワカンにも一応爪が付いているが、そもそも
ワカンは積雪の中で浮力をつけるための物、前、横の出っ張りが爪を効かす際の邪魔になる事になる。斜面をトラバース中に爪が効かない中途半端な状態で滑ったに違いない。結果論になるが2月の冬山、荒島岳の頂上を目指すならではアイゼン、ピッケルは必携、新雪、軟雪用にワカンを持って登る事が必要だった。夏山なら間違うことのない場所で間違ってしまう雪山の怖さだろう。
今回の事故から思うことは技術や装備以上に必要なものがあるように思う。
今回の事故でも遭難者は途中、迷うことや危険を感じた時が何回かあったはずだ。足跡をたどってそれを感じた。自分の力量、器量をわきまえて、前進するか、引き返すかを決める判断力が一番身につけて欲しい大事な技術だと思っている。
登山家、冒険家を目指す人ならいざ知らず、ほとんどの人は楽しみで、癒しを求めて山に登っているはずだ。命まで掛ける必要はないはずだ。
引き返すタイミング、技量を知るタイミングですが、私は危険、怖いと2度思ったら引き返しなさい。止めることを勧めています。それ以上を望むなら、組織や経験者から技術を取得し、体力をつけ、経験を重ねれば克服できると思います。
3年ほど前にも同じような死亡遭難がありましたが、今回と同様に冬山登山の基本的な技術を身につけていれば防げたと思っています。低山ならともかく冬の荒島岳、シャクナゲ平より進むにはそれ相応の技術と装備が必要ですが、基本的な登山技術と心構えを身に着けていれば安全な山だと思っています。
最後に、今回の事故は大変残念なことですが、亡くなった方へのご冥福をお祈りいたします。
高松 誠
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